ごとう隼平

▼東京ネームタンク代表/コルクスタジオ編集長/京都芸術大学准教授 ▼マンガのストーリー…

ごとう隼平

▼東京ネームタンク代表/コルクスタジオ編集長/京都芸術大学准教授 ▼マンガのストーリーを研究する人 ▼小学館サンデー編集部に10年間通って出版社のノウハウを学び、同時にストーリー構造を研究 ▼マンガ文法を広め、楽しくマンガを作り届けられる世界を目指しています!

最近の記事

届ける相手を見極めないと、届かない、という話

相手が「どの立場から」話しているのか。これを見極めないと、伝わるものも伝わらない。 AIの話、著作権の話、この辺りの話は、クリエイターに向けて話しているのか、消費者に向けて話しているのか、曖昧になってしまう。 誰がどの前提に立って話しているのかを理解しないと、虚空に石を投げ合うような、無意味な論争になってしまうと感じる。お互いに世の中良くしようと想いあっているのに、悲しいばかりだ。 立場はくるくる変わる。一様に相手を判断してしまうと、間違いやすい。 どんな仕事も社会を

    • クリエイターは知って欲しい、絵やマンガの「今」の学び方

      今の若い人たちは、本当に絵がうまい。 その理由は、小さい頃からpixivなどでたくさんの上手な絵に触れ、YouTubeなど描き方の動画も潤沢にあるからだ、と言う説をよく聞く。 でも、その理由は、本当にそれだけなんだろうか。 マンガの学校をやっていると、学習の仕方と言うものが、すごい勢いで進歩しているのを、日々感じる。 なぜ高校生が160キロの速球を、投げられるようになったか僕が子供のころは、日本人は体格的に、160キロは投げられない、と言うことをよく聞いた。 でも、

      • 物語の全体を掴む方法は、デッサンと同じって話

        マンガ専科の中で、物語の大きなカタチを掴むために、既存作品の第一話を、4枚の紙しばいにする、という課題に取り組んでもらった。 40人近い参加者が挑戦してくれて、4枚紙しばいがずらっと並んだ。この数だからこそ見えてくるものがある。 今回僕の予想とちょっと違う結果があり、だからこそ得た感覚があった。 4枚の選び方はこんな感じです〇〇な主人公が 〇〇な状況になっちゃって 〇〇を乗り越えて 〇〇を手にいれる ストーリーとは、主人公が何かを手に入れるまでの道筋だ。抽象化す

        • 想いが強いタイプほど、作品が届かない罠

          排出型の作家さんは、世の中に対して伝えたいこと、メッセージがはっきりしていることが多い。 と言うのは、これまでも話した通りだ。 そういう作家さんは、特に物語の中盤後半に強みを発揮する。 キャラを深掘りクライマックスで感動を呼ぶテーマを描くことができる。 逆に弱点もある。 序盤中盤から、 読者の心をときめかせるような、ウキウキワクワクを描くことに、 本人がウキウキワクワクしなかったりする。 商業マンガと言うものは、エンターテイメントだ。 どうしてもワクワクする入り口が必要

        届ける相手を見極めないと、届かない、という話

          あなたは何系?マンガ家「水見式」

          先日、排出型と萌え型の話をしたときに、ハンタの念能力のようだ、と言うリプをいただいた。 ほんとにその通りだと感じる。今日は、マンガを描く人なら簡単にできる、マンガ家専用の「水見式」を紹介したい。 ハンターハンターの念能力は、自分の系統の能力以外を使うこともできる。ただ、それは相当のエネルギーを消耗してしまう、という設定だったと思う。 これとまったく同じで、排出型の人が萌え型の描き方をするのは、できなくはない。その逆も然り。特訓すればできるようになるし、ただやっぱり、やた

          あなたは何系?マンガ家「水見式」

          描けないものは、描けないって話

          これまで2000人以上、漫画を描く人たちと作品を作ってきた。そんな中で作品を描けなくなってしまった人をたくさん見てきた。 技術を持った漫画家さんでも、描けない、と言う場面に何度も直面した。 なぜスキルがあるのに描けないのか。 それは決してやる気がなかったり、才能がなかったりするわけではない。でも描けないことが続くと、自分を信じられなくなってしまう。 なぜ描けないのか、そのほとんどの理由ある程度スキルを持った漫画家さんが、描けなくなってしまう理由のほとんどが、創作タイプ

          描けないものは、描けないって話

          内と外、強みをどこに持つべきか

          コルクラボのストレングスファインダーの理解を深めるための会に参加した。その中で冒頭、講師の方から、強みと言うと、外に持ちがちだ、と言う話を聞いた。 確かに、資格、スキル、何か点数として評価できるもの。地位や名誉と言うものも、自分の強さを表すものかもしれない。 でも、そういう自分の外にある強みは、追い求めると苦しい、とも言われていた。外にある強みは、手に入れても、他にも手に入れている人がいるから、つい比べてしまう。上を見ればキリがない。 対して、自分の内側に強みを見いだす

          内と外、強みをどこに持つべきか

          なぜ連載漫画は、結末未定のまま始められるのか

          たまに聞かれることに、世にある多くの連載漫画は、結末が決まっているのですか?と言うものがある。 バッチリ決めている人もいれば、予定外のタイミングで連載終了する可能性を考え、いくつかのエンディングのパターンを作っている人もいる。 でも、新人の場合は、3話くらいのネームで、連載会議に通るので、開始時点で結末のことまで考えてない、と言うこともよくあるのではないかと思う。 結末を決めないで始められるなんて、と疑問に思うかもしれないが、物語の構造を考えると、それほど不思議なことで

          なぜ連載漫画は、結末未定のまま始められるのか

          本気で原稿に向かうから、分かることがあるって話

          根性論にも近いけど、漫画は感情を描くから、キャラを掴むのに「根性」で迫るというのは、意外と近道なのかもしれない。 今、ちょびさんと言う新人の漫画家さんの打ち合わせに、経験豊富な、ベテランと言うと嫌がるかもしれないけど、こしのりょうさんにも入ってもらっている。 ちょびさんがキャラクターを掴むのに、やや苦労していて、その理由もまだ探っている最中だ。主人公を、作者と重ねるのか、それとも眺めて描くのか。共感型と興味型の間で迷わせてしまっているかもしれない。 そんな中で毎回、こし

          本気で原稿に向かうから、分かることがあるって話

          苦にならない、のシェアで世界は平和に回るって話。

          先日、ランチの予約を取る必要があって、頑張って通話して予約を取った。大体いつも後回しにして、ギリギリになって、ようやく重い腰を上げるのだが、今回は頑張った。 と言う話を、社員の渡邉さんにしたら、私は予約を取るのが好き、と言い始めた。世の中に予約を取るのが好きという人がいるのか!すごい発見だ。 しかし思えば、佐野さんも売り上げを予測する難しい関数を楽しげに組んでいた。志賀さんも予算のスプレッドシートを触るのが好きらしい。 自分の気がまったく進まないことを、世の中には苦もな

          苦にならない、のシェアで世界は平和に回るって話。

          不安や悲しみを受け止めた先に、創作はある

          先日、コルクの創作6箇条と言うものを作った。 第一条は ・ただ1人、深く届ける相手を定める。 と言うものだ。これは一人一人の世界を変えるという、コルクのミッションにも沿っているし、個人的にも、僕も漫画家としてそのように創作してきた。 漫画は、感情を描く。主人公の感情かもしれないし、作者の感情かもしれない。だからと言って、自分ばかりに注目してはいられない。 作品は、届けるものだ。しっかりと届ける相手を見つめる必要がある。相手のことをいかに想えるのか、と言うのが創作におい

          不安や悲しみを受け止めた先に、創作はある

          創作が辛くならない、2つのポイントとは

          先日、漫画家さんと打ち合わせをしていて、実は今進めている作品が全然楽しくないと感じている、と打ちあけられた。 技術力がある作家さんだったので、打ち合わせで決まった通り描けてしまう。でも実は全然気持ちが乗ってなかったのだ。 ちょうど引き継いだタイミングだったので、申し訳ないけれども、これまでのプロットやネームは一旦忘れて、1から一緒に再構成してみた。 描いててテンションの上がらないものは一切排除していく。 企画書が変わらなくても、ストーリーは全然変わる。コルクスタジオの

          創作が辛くならない、2つのポイントとは

          仕事の問いと、人生の問いの関係性

          先日、コルクに1年間限定で出向に来ているKさんから、打ち合わせの時間をもらえないかと打診があった。 Kさんとは、スクールチームで一緒に仕事をするようになって2ヶ月目。1年間で何か1つやり遂げる目標を決めるために、自分の強みや良いところを教えて欲しいということだった。 もはやその姿勢が最高に強みだし、良いとこだよなと思いつつも、Kさんの仕事上で感じる強みと、人間としての魅力を2つ伝えようと思った。 仕事と人生が一致しているように見えるKさんの印象として、仕事は仕事、プライ

          仕事の問いと、人生の問いの関係性

          3行日記を100行日記に変えて気づいたこと

          というわけで、前回から3行日記を100行日記に変えてみた。そのことによって気づいたことが早速いくつかある。 自分の見えてなかった思いが、どこまでも隠れているものだなと思った。 まず、僕はそもそもコンテンツとして、3行日記を面白いものと思えてなかったのだ、と言う事。 そしてその前に、自分が出すものは全てコンテンツだと思っている、という大前提も、無意識的に持っていたのだと気づいた。 3行のフォーマットが難しすぎるという気づき面白いものを書くためのフォーマットではないのだか

          3行日記を100行日記に変えて気づいたこと

          やらされ事を自分事にできた、最近の経験。

          3行日記というものがある。 編集者の佐渡島さんから、これを続けたほうがいいよ、と言うアドバイスをずっともらっていた。 3行日記とは、その日にあった出来事、感情、気づき、を1行ずつ振り返る日記だ。 でも、これがなかなか続かない。 佐渡島さんと3人でYouTube配信をやっているイヌジンさんとやっても、やはり続かない。 佐渡島さん的には、これが1番僕の活動を、簡単に佐渡島さんも社員も理解する方法だと言う。 この前の配信で、佐渡島さんから衝撃的な発言があった。「ごとうさんは

          やらされ事を自分事にできた、最近の経験。

          AIの進化によって消えてしまうのは、「人間」と「マンガのキャラ」の境界線なのかもしれない

          こんにちは、マンガスクリプトDr.のごとう(@goto_junpei)です。 最近、100年以上前のモノクロ動画をAI着色でフルカラー化させた動画、みたいなものを目にする機会が増えましたよね。映画とかはもちろん、普通のニュース映像や街の様子なんかも含め。 *例えばこんな感じのやつです* 単純に「AIすげぇ!」と思う一方、フルカラー化でよりリアルを感じられるようになった分、そこでイキイキと動いてる皆さんがもう誰も存命ではないと思うと……ちょっと不思議な気分になります。

          AIの進化によって消えてしまうのは、「人間」と「マンガのキャラ」の境界線なのかもしれない