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40代編集長と60代元編集長で、真夏のコミティアに持ち込みをして得られた気づき

こんにちは、マンガスクリプトDr.のごとう(@goto_junpei)です!

今月初めに、久しぶりにコミティアの出張マンガ編集部に行ってきました。しかも読む側ではなく、企画を持ち込む側として!

というわけで今回は、コルクスタジオ編集長・ごとうではなく、持ち込み担当・ごとうとしての気づきを中心に書かせていただきます。


コミティアはいいぞ! 出張マンガ編集部はいいぞ!

まずコミティアがどんなイベントか、公式から引用しますと以下のとおり。

コミティアとはプロ・アマを問わないマンガ描きたちが自主出版した本を発表・販売する展示即売会です。
そこは、枠にはまらない自由で新鮮な個性を持つ作家が腕を試す自己表現の舞台であり、既製品に飽き足らない読者にとってまだ見ぬ、そして求めていたマンガを発見できる宝探しの山でもあります。

COMITIA145開催情報 「コミティアについて」


そして最大の特徴の1つが、いわゆる二次創作ではなく、オリジナル(一次創作)作品のみが販売できる場所であるということ。

詳しくは公式サイトをみていただければと思いますが、とにかく描き手と読み手の熱量が非常に高いことで知られるイベントなのです。

そして約3000〜4000ものサークルが参加するだけでなく、なんと100誌(媒体)を超える編集部が、出張マンガ編集部として参加していることも大きな特徴です。

「出張マンガ編集部」とは出版社がコミティア会場でマンガ・イラスト等の持込を受け付けるもの。気軽にプロの編集者のアドバイスを聞くことが出来る恒例企画です。2003年よりコミティアが先駆けとなる形でスタートし、現在年間5000件以上の持込があります。出張マンガ編集部がきっかけでデビューした方も数多く、業界からも高い評価を得ている人気企画です。

COMITIA145開催情報 「出張マンガ編集部」


年齢・経験を問わないのはもちろん、すでにプロデビューしているマンガ家も、編集者にどう評価されるかを聞くために作品を持ち込めるという素晴らしい企画となっています。

もちろん編集部側としても、新しい才能と出会える絶好の機会ですので、参加姿勢は真剣そのもの。公式サイト掲載の「各編集部よりのアピール」からも、期待の大きさが伝わってきますよね。

特に商業マンガデビューを目指す人なら、絶対に行ったほうがいい!
そう、コミティアはいいぞ・・・!!

欲しかったのは、編集者からの「客観的な評価」と「フィードバック」

ごとうが参加させていただいたのは、9月3日(日)開催のCOMITIA145でした。

「コミティアのことはわかったけど、コルクスタジオ編集長が他誌に持ち込みってどいうこと? 産業スパイ?」と思われた方もいるかもしれませんが、今回はもちろんコルクスタジオとしてではなく、個人のごとうとしての持ち込みでした。

以前このnoteでも、元IKKI編集長の江上英樹さんと「スイッチバックのマンガを作っている」という話をさせていただきましたが、そのネームを編集者の皆さんに読んでいただきたかったのです。

持ち込みは、そのまま連載まで進む流れになればもちろん嬉しいですが、それ以上に他者(しかもプロの編集者)からのフィードバックを得られる絶好の機会。

好きは全ての原動力であるものの、商業媒体連載を目指す以上は、「好きではない人」に伝わるかどうかが非常に重要。

江上さんはもちろん、僕もプロの編集者ではあるものの、この企画は江上さんも僕も「鉄道」が好きすぎるという1つの問題を抱えていたので、いろんな人の客観的な評価をぜひ聞いてみたかったのです。



結果としては半ば予想通り、そもそも鉄道自体が好みの分かれるジャンルということもあり、かなりバラバラの評価となりました。

「そもそも廃線がネガティブだから、そこに投資するのはちょっと難しいかも……」というところもあれば、「ちょっと直せばいけそうですね!」という反応のところも。

どの意見も頷けるものばかりでしたし、みんな真剣かつ丁寧に、そして優しくこちらの話を聞いてくれて、本当にありがたかったです。

ぜひ今回いただいたフィードバックを企画に反映し、引き続き媒体での連載を狙いたいと思います!

自分が何をやりたいのか、「企画」を伝えることで良いフィードバックにつながる

僕は普段皆さんの作品を見る側の立場だけに、今回久しぶりに逆の立場になれたことは、本当に良い勉強の機会となりました。

特に、「編集者はどういうふうに言われるとわかりやすいのか」「どういうふうに言われると良い議論になるのか」をあらためて理解できたと思います。

特に大事だなと実感できたのは、
最初に「自分が何をやりたいのか」というのをちゃんと伝えること
やっぱりこれに尽きるなぁと。

そもそもネームがパーフェクトではない状態で、伝えたいと思っていることを相手に理解してもらうというのは相当難しい。

加えて、魅力的にみせようとしている要素が何個か入ってしまうと、編集者からのフィードバックと自分が知りたかったポイントが、ズレてしまう可能性も高くなります。

例えば今回僕が持ち込んだ企画には、スイッチバックの魅力を伝えるための要素の1つとして可愛い女の子が登場します。

木次線の魅力を伝えるマンガ、ほんと早く皆さんにお見せしたい・・・!

この女の子が魅力的なのは、作画を担当してくれているマンガ家さんのおかげなのですが、ネームをみた編集者からすると「この作品は、鉄道の魅力を伝えたいのか、女の子を可愛く描きたいのか、どっちなんだろう」と迷ってしまう可能性もあります。

ですが最初に「このマンガでは鉄道の魅力を伝えたいんです!」と伝えるだけで、方向の分岐がなくなり、議論のショートカットが可能になります。

あわせて、皆さん持ち込まれたマンガ(ネーム)そのものに対する感想はしっかりくれるのですが、企画としての感想をくれる編集者はほとんどいません。

だから、最初にちゃんと企画の意図を伝え、そこに対する感想をしっかりもらうようにしましょう。

具体的には、今見せているネームに対する感想ではなく、「今自分が狙っていることが100%できたとしての可能性」について聞いてみてください。

そうすると、「ウチの雑誌の狙いはこうだから」など、企画としてもう一段奥の話をきっと聞けるはずです。

どこで読者に刺しにいくのか、どういう点を買わせたいのか、そういう話のほうが連載のためには大切ですし、それがまさに「企画」になるんだと思います。


例えばおにぎり屋さんの新商品開発でも、握り方や形の話をする前に「次は鮭おにぎりにしたい」とか「ウチではもう梅は置かない」などの話をしておけるといいように、そもそも企画としてどうなのか、というのは確認しておくほうがお互いにメリットは大きいでしょう。

そういう意味で、ネームのブラッシュアップは最後でいいな、とあらためて感じることができました。連載を狙うというのは、やっぱりそういうことだと思います。

持ち込む側・持ち込まれる側を経験したからこそ、改めて位置付けたい「1回目のネーム」


もう一つ、今回のコミティアで久しぶりに持ち込み側の立場になり、あらためて実感できたことがあります。

それは、やっぱりネームは1回目で通そうとするのではなく、編集者の指摘などを取り入れながら、大きく組み直すことが大事、ということ。

良いキャラ、良いシーンがあれば、編集者としてはそれを活かしたいと思っているからこそ、調整をお願いしているわけです。

自分がマンガ家だったらいくらでも描き直すし、なんだったらコミティアから帰ったらそのまま描き直したいぐらいですが(笑)、編集者としては「描いてもらう立場」なので、どうしても指摘内容は遠慮を伴ってしまいがちに。

でも、それで連載が本当に決まるかというと、商業はやっぱり甘くない。

だから、まずはそこをきちんと話せる関係であることが、マンガ家と編集者は大事なのかもしれないと思いました。

今回の持ち込み企画でも、大なり小なり調整を指示されたのですが、その箇所はどこも大体一緒。だから僕は「内容」として大した調整だと感じることはなかったのですが、「ページ数」でいえばほとんどが調整だったともいえる状況でした。

ここをどう捉えるか次第で、連載までの道のりが大きく変わってくるのではないでしょうか。

いずれにしても、1回目のネームっていうのは大事なものを掴むための仮組みのようなもの。そのための工程として編集者とのやりとりや持ち込みは、やっぱり絶対必要なんだろうなと改めて感じた次第でした。

編集者は優しい。みんなぜひ「持ち込み」に行こう!

そんなわけで大変収穫の多かったコミティアの出張マンガ編集部への持ち込みですが、こういう一同に編集部が介してくれる場は、自分がやりたい企画が明確であればあるほどありがたいものです。

今回は8社ぐらい回らせてもらったのですが、一社一社アポとってとなると、ほんとに何週間もかかる作業ですからね。

ちなみに今回は作画担当のマンガ家さんがちょうどコロナになってしまったため、江上さんにも持ち込みをやってもらいました。

出展側でもなんでもない一般参加だったので、11時になるまで真夏の炎天下の待機列に、60代の江上さんと40代の僕が二人でちゃんと並んで参加しました。気持ちはともかく、熱中症とか膝へのダメージとか、そういう点では不利だったと思います。


会場には知り合いもたくさんいて、昔頓挫した企画の担当が編集者になっていたり、昔ウチにインターンしてくれていた人やコルクラボの人なんかもいて、そういう再会の場としてもまた良い機会に。

何より、どの編集部の人も丁寧に優しく聞いてくれて、「自分ももう一度描きたいな」「シンプルに一つの作品をひたすら良くしていく作業に没頭したいな」と思わせてくれる大変いい時間を過ごすことができました。


マンガ家志望の皆さんは、おそらくいろいろなところで「持ち込みはしたほうがいい」とアドバイスされていると思いますが、本当に持ち込みはやったほうがいいですよ!

なお次回のコミティアは2023年12月3日(日)開催予定となっています。

また僕と江上さんが持ち込みをやっているのを会場で見かけたら、ぜひお声がけくださいね。というわけでまた次回、さよなら〜!


<追伸>
今回の話を、一緒に企画をやっているWebメディア編集者のヨシキ(@moriri_nyo)さんにしてみたところ、

「えっ……マンガ業界ってそういう感じなんですか? それは元IKKIの江上さんとコルクスタジオのごとうさん相手だから、みんな気を遣って優しくしてくれただけでは……? わかりやすい忖度とか、突然OBが部室に来たとかみたいな感じだったのでは……?」

と非常に怪訝な顔をされました。

・・・そんなことないですよ!
・・・そんなことないですよね!?

たしかに封筒がなかったので、ネームを思い切り「コルク」って印刷してある社用封筒に入れて渡してましたが、そんなことはないはず・・・!!

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ごとう隼平
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