
日蓮聖人が教えてくれた!? マンガの描き方の奥義は「キャラの強さ」と「取材」。
コルクスタジオ所属のマンガ家・やじまけんじさん(@yajima_kenji)と一緒につくった新作『あなたは尊い 残念な世界を肯定する8つの物語』が、先月刊行されました!
主人公は、日蓮宗の開祖であり、ことし2月に降誕800年を迎えた日蓮聖人!
仏教を足掛かりに、「別れ」や「憎しみ」、「親子の情」といった普遍的な価値観を問う、異色のマンガになっています。
今に伝わる史実を題材にしつつ、マンガ的な想像力を駆使して、現代を生きる僕らにも切実に感じられるストーリーです。ぜひ手にとってみてほしいです!
800年愛され続ける「キャラ」の強さ
日蓮聖人を主人公に据えた本作をつくる過程では、
歴史をくぐり抜けてきたキャラクターは圧倒的に強い!
ということも実地に学べました。
日蓮聖人が打ち立てた日蓮宗は、じつに800年にわたり信仰され続けてきました。
ご本人も、教団の関係者からは「お祖師さま」と呼ばれ、昔もいまもとても親しまれています。
こんな800年も愛されてきた人格=キャラクターが存在するって、すごいことではないですか?
ちょっと鍛えられ方のレベルが違いますよね。
聞けばどうやら日蓮聖人自身もいつも強気で、言っていることは分かりやすく、行動にしっかり芯が通っていたそう。
つまり、相当に「キャラが立っていた」と言えますよね。
マンガ作品の主人公として活躍していただくうえでは、ご本人のキャラクターを生かし強調するよう心がけました。
死んだらあの世で死んだ人に会えるの?
— やじまけんじ (@yajima_kenji) March 4, 2022
(1/7) pic.twitter.com/ScVSre1XQi
公式に伝わる逸話は豊富で、どれも興味深いものばかりである一方、それをなぞるだけではマンガとしてのオリジナリティに欠けてしまいます。
そこで、逸話に頼らぬストーリー展開を考えていきました。
結果、作品内の日蓮聖人は、みずから海に飛び込んだり、クマと対面して経を唱えたりもすることに……。
しかし想像でエピソードを作るということは、そのキャラクターを深く理解する必要があります。
法華経とはなんなのか、日蓮聖人が言いたかったことはなんなのか。やじまさんや取り組んだみんなで、とにかく話尽くしました。
当然ながら日蓮宗のみなさまにしっかり監修していただいたのですが、みなさん「うちのお祖師さまならこんなこともあり得たかもしれない」と納得していただけました。
マンガ家にとっての「取材」の大切さ
日蓮聖人の教えのキモとはなんでしょうか。
僕なりの理解だと、自分を肯定し、世界を肯定すること。
これは現代を生きる僕らにとっても、とても重要な考えに思えます。
そう訴えた日蓮聖人の気持ちも大事です。
その気持ちをつかんでもらうため、やじまさんには日蓮宗の修行のひとつとしてある滝行も体験してもらいました。
滝に打たれて修行するとはどういう体感なのか。
周りの空気感は?
水の冷たさは?
そのとき胸中に去来するものは?
そういうのはやってみて初めて気づくところでしょうから。
フィクションを描くマンガ家は、想像でキャラクターを描いていくわけですが、できるだけその想像に「確からしさ」をまとわせたいところ。
そのためにはキャラクターと近い環境に身を置いたり体験をしてみたりして、気持ちをシンクロさせようとするのも有効です。
これはすなわち、取材をする、ということですね。
実在しないキャラクターはどう取材すればいいのか?
今回の主人公である日蓮聖人は実在した人間ですが、マンガの場合キャラクターは、何もないところから生み出すことも多いですね。
そんなときは、自分自身を取材するのはどうでしょうか。
キャラクターを個性的たらしめているのは、そのキャラ自身に歴史があるからです。
そのキャラが人生においてどんな強い体験をしてきたのか、その体験にシンパシーを感じられれば、読者はキャラの個性を感じ取れます。
では、人の心を震わせるキャラの体験は、どうしたら描き出すことができるか。作者がキャラと近しい体験をして心を震わせたことがあれば、それを思い出して描くことがおすすめです。
たとえば学園もの作品を描こうとするのなら、自分の通っていた学校を訪ねてみるのもいいでしょう。
よく遊んだ場所、
初めて誰かに告白をした思い出の公園、
通学に使っていた駅 etc…
そういうところに足を運んでみれば、何かしら胸に甦るものがあるはずです。
描き出そうとしているキャラクターと自分の体験がまったく異なるものだとしても、心を揺さぶられる要素はたいてい似通ったものですよね。
取材で現地に赴くというのは、その「心揺さぶるタネ」をもう一度見つめ直しに行くということに他なりません。
キャラクターとする対象への取材、ときには自分への取材を重ねれば重ねるほど、あなたの描くマンガはリアリティを増していくはずです。
だからマンガを描きたい人なら、取材をしない手はありません。取材それ自体もきっと楽しいことですしね!
【今週の池袋本店1~3位】
— ジュンク堂書店池袋本店 (@junkudo_ike) March 14, 2022
1位/やじまけんじ『あなたは尊い 』徳間書店
2位/伊藤祐基『一番稼げる!ココナラ副業の教科書』信長出版
3位/野上浩一郎『3か月で自然に痩せていく仕組み』ダイヤモンド社 pic.twitter.com/WyJXC8WISr
800年の時を超えて、日蓮聖人にマンガの描き方も教えてもらた気持ちです。