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『強化レベル99 木の棒』のここがすごい!

Webtoon編集長のごとうがマンガスクリプトドクター的に解説する「このWebtoonがすごい!」
急に思い立って始めた第一弾は…Lineマンガ「強化レベル99 木の棒」です!

https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0002214

さすが大人気作品。大胆な興味の引き方だけでなく、気持ちを掴む丁寧な仕立てがあると感じました。
『強化レベル99 木の棒』のここがすごい!という隠されたポイントを解説します!

強化レベル99 木の棒のここがすごい!

インフレ全開で飛ばしていく気持ちよさ!

最強の木の棒を手に入れる話なんだな、ということはタイトルからも分かりますね。
予想通り主人公は最強の木の棒を手に入れ、最初その木の棒を手から落としてしまうことで、その威力が分かります。

ああ、ここで威力を見せるのね、と予想はさせるけど、予想外。予想外なのはその威力です。

その一撃は大陸を裂き、宇宙まで届く。ドラゴンボールでも見ないくらいの破壊力…
ここに意外性があります。え…こんなにやっちゃっていいの…?

少なからず物語に触れてきた人は、当然物語が進むに従って、主人公が成長し、技の効果も派手になっていくことを知っていますよね。

それなのに最初の一撃が宇宙に届いてしまうと、え??この先どうするの???これを超えていくの????という、ある種メタ的な興味が生じます。

これはこの作品が元々異世界転生系の後発であり、ストーリー慣れしている人を前提に作っているから成り立つ手法ではないでしょうか。

なんにしても半ば強引な方法で最初から読者の気持ちを掴んで離しません。

クソダサい武器を読者に気に入らせる手法

初っ端からの超絶火力、という雑にも見える展開の裏で、丁寧な調整もしてあるのが、今作の肝でもある「棒」の見せ方。

ファンタジー作品のポイントは、いかにその世界に行ってみたいか、その主人公の武器や魔法、特技やチートを自分も使ってみたい!という気持ちにさせるか、がとても重要になります。

でも、今作の武器は、木の棒。正直ださい…。もちろんそれを分かって企画にしているのは承知の上で…、ださい…

読者は、最強の木の棒を手にした主人公を見ても、同じように振り回したいなーとはなかなかならないのではと思います。
でもそこにこそ、今作は丁寧な工夫が凝らしてある。

木の棒に愛着を持たせる二段構え

まず、この木の棒は、強化を繰り返すことでLv99となり、最強の破壊力を持っています。ただ、すぐに分かるのが、耐久性がないこと。数回で壊れることが判明します。

しかしその後すぐにその世界のラスボスを倒すことで、今度は棒に耐久性無限、というエンチャントをかけられ、無敵の破壊力と無限の耐久性が組み合わさります。

この二段階を踏ませたことが、見事だな〜と感嘆しました。

もし仮に、最初から 破壊力も最強で耐久性も無限、という棒を手に入れた、という話だとすると、きっとそれほど興味を持てないと思います。
ふーん、そうですか。良かったですね、みたいな感想になってしまう。

それはなぜかというと、都合が良すぎる、からです。
リアリティのない都合の良さは、作者の妄想感が強く、ありえない世界だ…と読者が醒めてしまいます。

ファンタジー世界にリアリティを持たせるには、何事もそう上手くはいかない、という現実感が必要です。

最強破壊力ではあるが、耐久性はない、ということで、読者にそんなうまい話はないか、としっかり地に足ついた我々の話なのだ、という感覚に引き戻せています。


木の棒は、読者との共同創作物。

その上で、本来弱点だった耐久性力の弱さに、耐久力無限を組み合わせる。破壊力無限と耐久力無限を組み合わせたらどれだけの効果になるんだろう、という化学変化。

元々RPGゲームには、装備や強化、という組み合わせの楽しみというのがありますよね。強いけど水が弱点のサラマンダーに防水の盾を装備しよう、的な。

ゲームによっては性能の掛け合わせ、みたいなこともよくあるんじゃないかと思います。マテリアとか思い出すな…古いかな。

そして大事なのが、この組み合わせを思いつく過程を見せること。これがあることで、ただの木の棒が、自分がイマジネーションし、戻れないリスクを負い、チャレンジした、ある種の創作物になります。

またちょっと面白いのは、この感覚、ゲーム実況を見ているのにも近いものがあるのかもしれませんね。読者層との親和性も良さそうです。

とにかくも、そういう経緯でできたものは、ただの木の棒でなく、唯一無二の相棒になります。

この物語の最も主軸となる、棒という武器に、段階を踏ませて興味を持たせきった。これがとても見事!言うは易しで、これは相当に難しいことです。ここでこの棒を気に入らせ、愛着を持たせられているからこそ、あとはどんな冒険が待っていたとしても、痛快なこと間違いなしです!

一見イロモノ系に思いきや、細かいテクニックで引き付け続ける、目の離せない作品と思いました。これからも全力で応援していきたいです!

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おまけ:ここから有料部分

マンガスクリプトドクター的に見て、この作品のここはこんな感じにもできるのでは?という別案など書いていきますね!10行くらいのものなので、より追求したい描き手でなければ、課金いただくまでもないと思います!

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367字

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